《 ラプソディー風 》
【 ピアノ協奏曲 ヘ調 】
ガーシュウィンは、貧しいユダヤ系ロシアからの移民の
両親の子としてニューヨークのブルックリンで生まれた。
父は自分の無学にひけ目を感じていたので、子どもたちには、
正規の教育を受けさせたいと考えていた。
兄がピアノを習い始めると、ガーシュインは異常な興味を示すほど
音楽好きだったが、優れた画才もみせていた。
1930年代に4本のハリウッド映画のために主題歌を作曲しているが、
最後の作品「ゴールドイン・フォリーズ」の完成をまたず、
1937年7月11日の朝、ハリウッドで脳腫瘍のため急逝した。
独身を通した38年の、短い生涯だった。
1925年の作品「ピアノ協奏曲ヘ調」は、ガーシュインの
唯一の協奏曲だが、彼の交響的作品としては、この作品を
書く前年にシンフォニック・ジャズ「ラプソディー・イン・ブルー」を、
1928年に「パリのアメリカ人」を書いている。
彼の楽想は、ラプソディー風で自由な即興的変化に富んでいる。
「ピアノ協奏曲ヘ調」においても、楽式的なまとまりよりも、
さまざまに変化する楽想そのものの美しさと楽想間の対照の
美しさが魅力となっている。
第1番 Allegro
第2番 Andante con moto-Adagio
第3番 Allegro agitat
《 アメリカのオペラ 》
【 オペラ「ポーギーとベス」】
アメリカ音楽の古典ともいえるオペラ「ポーギーとベス」は、
1935年に作曲され、その年の10月10日にニューヨークの
アルヴィン座で初演されたが、反響は得られなかった。
しかし後に評価が高まり、数カ月続演された。
音楽全体にジャズの雰囲気が漂う「ポーギーとベス」は、
厳密にはオペラというよりもミュージカル・プレイに近いもので、
フォーク・オペラともいわれる。
新しいスタイルをもった、民族性の強いガーシュインのオペラとして、
アメリカのオペラの代表作に数えられる。
台本は、作詞家として活躍していた兄のアイラと、
デュボス・ヘイワードが書いている。
南カロライナ州のチャールストンを舞台に繰り広げられる
ニグロの日常生活で起きた殺人事件など、
ポーギーとベスの叶わぬ愛を描いていて、
登場人物は、ただ一人の白人弁護士以外は黒人である
全3幕からなるが、第1幕で黒人漁師の妻クララが歌う
子守歌の「サマータイム」は、ポピュラーソングの
スタンダードナンバーとして広く親しまれている。
《 異国の印象 》
【 パリのアメリカ人 】
二十世紀前半に最もアメリカ的な性格、手法を反映した
作曲家にあげられるガーシュインは、ピアニストであり、
ジャズ・ソングの作曲家でもあった。
21歳のときに作った「スワニー」で、多くの期待を集めることになり、
彼の才能もまたそれにこたえ、アメリカ音楽史にその名をとどめた。
30歳の春、休養のためパリに旅行したが、そのときの
印象をまとめて作曲したのが「パリのアメリカ人」で、
大部分はパリでの滞在中に書かれた。
帰国後の12月13日、ダムロッシュの指揮で
ニューヨーク・フィルハーモニーの演奏会で初演され、
大成功だった。
この曲は、初めてパリを訪れた一アメリカ人の驚き、
喜び、郷愁などの印象を描いていて、構成は
ラプソディーで、テンポや曲想の変化がいちじるしい。
全体として、また、なかなか印象主義的なところも多い。
大体3つの部分に分けられるが、最初の部分はパリの町を
歩くアメリカ人の観光客が感じる様々なフランス的な印象で、
バイオリンとオーボエのユーモラスな忙しい主題で始まり、
アメリカでは聞かれないタクシーのラッパが、
効果的に取り入れられている。
第2の部分に入り、トランペットが甘い郷愁的な
主題を奏で、官能的なアンダンテの「ブルース」が続く。
第3の部分ではアレグロに変わり、サキソフォンが
元気のよい主題を奏し、目まぐるしくテンポが変化して終わる。
《 ジャズ感覚 》
【 ラプソディー・イン・ブルー(グローフェ編曲)】
ガーシュインは、二十世紀前半に最もアメリカ的な性格、
手法を反映した作曲家にあげられ、ピアニストであり、
ジャズソングの作曲家でもあった。
17歳のとき、ニューヨークの音楽屋のソング・プラッガー
(店頭で客に乞われるままに、そこで出版している楽譜を
ピアノで弾いて聴かせる職)になり、多くの作品を
研究することができた。
「ラプソディー・イン・ブルー」は、21歳で「スワニー」を
作曲してから5年後、1824年のリンカーンの誕生日に
催される音楽会のために依頼されて作曲した。
アメリカン・ジャズと、交響管弦楽とを巧みに混合させた
作品だが、当時ガーシュインは管弦楽曲に不馴れなために
「グランド・キャニオン」の作曲者として知られるグローフェの
編曲により、彼のピアノ独奏と管弦楽によって初演された。
「この曲は、きわめて手軽に書かれたものなので、
鑑賞にあたって内容を詮索することは全く無用で、
花電車が連なって進行するのでも眺めるように、
気軽に変転する曲想をたどってゆくことが、少なくとも
この作品を鑑賞する態度として、最も相応しいものであると思う。」
(ある音楽評論家の評)
《 キューバの印象 》
【 キューバ序曲 】
ガーシュウィンは、1932年の2月にキューバの首都ハバナを
休暇で訪れているが、そのときの印象をもとに作られた作品が
演奏会用序曲「キューバ序曲」で、ボンゴやマラカスなどの打楽器、
ルンバやハバネラといったリズムが用いられ、
南国の明るい雰囲気を作り出している。
作曲をした年の夏の野外コンサートで初演されたが、
そのときは、「ルンバ」という曲名だった。
11月のメトロポリタン歌劇場での慈善演奏会の
再演時に「キューバ序曲」と改題されている。
《 完璧な音楽家 》
【 弦楽四重奏曲「子守歌」】
ガーシュウィンは、弦楽四重奏曲を2曲書いたが、
弦楽四重奏のための「子守歌」は、「ララバイ」とも表記され、
1919年に作曲された。
彼の生前には出版されず、死後30年あまりを経て
1968年にやっと出版された。
《 ピアノ曲集 》
【 3つの前奏曲 】
二十世紀アメリカ音楽の古典として有名な 「3つの前奏曲」は、
1925年頃に作曲したピアノ曲だが、初演のときは5曲が演奏された。
その中の3曲がピアノ曲集として1926年に出版された。
タンゴとチャールストンのリズムをブレンドした独特のリズムの第1番。
けだるいブルースの第2番。
アップテンポのラグタイムの第3番とそれぞれに魅力的な小品である。
この曲はいろいろな楽器のために編曲されているが、
ガーシュウィンと親交のあったヤッシャ・ハイフェッツによる
バイオリン独奏用の編曲は有名である。
第1番 Allegro ben ritomato deciso
第2番 Andante con moto e poco rubat
第3番 Allegro ben ritomato deciso